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バックナンバー 2005年10月

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知識の蔵 2005年10月20日
ステンレス鋼の溶接特性

ステンレス鋼の溶接方法にはさまざまな方法がありますが、今回はアーク溶接の注意点について述べます。
 
 
1. 溶接部の組織
アーク溶接の溶接部では局部的な溶融と凝固が起こっています。その周辺部分(HAZ:HeatAffectedZone)は溶接の熱の影響を受けてミクロ組織が変化しています。
このため溶接部は強度、耐食性に問題が起こりやすいので注意が必要です。
 
 
2. オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の溶接
(1) 溶接ひずみ
オーステナイト系ステンレスは熱伝導度が悪くひずみを起こしやすい性質があります。
ひずみを少なくするためには、治具による冷却、溶接母材の板厚を厚くする(1.5mm以上)、レーザー溶接で接合するなどが有効です。
 
(2) 応力腐食割れ
塩化物などを含む比較的高温の水溶液やアルカリ溶液中で使用すると、応力腐食割れを発生する場合があります。
対策としては、低炭素材を使う、溶け込み不足を無くして裏シールドを行なう、溶接後の熱処理を行なうなどが考えられます。
 
(3) ウェルドディケイ
熱影響部にCr炭化物が析出して、溶接部に平行にウェルドディケイと呼ばれる帯状の腐食領域が発生することがあります。
対策としては、低炭素材を使う、溶接後に再度溶体化処理を行なうなどが有効です。
 
 
 
3. フェライト系ステンレス鋼(SUS430)の溶接
(1) 溶接部・熱影響部の結晶粒粗大化などによるぜい化
ぜい化により機械的性質(延性・靭性)が大幅に低下します。
対策としては、後熱処理を行なう、低炭素材を使う、レーザー溶接などが有効です。
 
 
4. 溶接時の注意点
(1)母材の溶接性を吟味する
(2)母材に適した溶接方法を選択する
(3)溶接面の洗浄性を確保する
(4)適切な溶接姿勢・開先形状を採用する
(5)適正な溶接電流・速度を保ち、入熱を確保する
(6)温度・湿度・風などの施工環境にも留意する
(7)溶接変形防止のため、適切に拘束する
(8)必要に応じて予熱・後熱処理を施す

特に
水と接する部分に使用する材料は、低炭素材(SUS304Lなど)を使用して溶接することが必要で、使用条件によりSUS304以上の耐食性を持つ材料(SUS316Lなど)を使用する。

知識の蔵 
ステンレス鋼の板金加工特性(軟鋼板と比較して)

ステンレス鋼の板金加工特性(軟鋼板と比較して)

1.せん断加工の注意点 
 
(1)せん断抵抗、引張り強さとも軟鋼板の約2倍。 → 約2倍の力を要します。
(軟鋼板:約30Kg/mm2 ←→ ステンレス鋼:約55Kg/mm2)

(2)加工硬化性が大きい。(加工すると硬くなる性質。)

(3)打ち抜き時に熱を発生させる。 → 高速加工では冷却を必要とします。
 
 
2.曲げ加工の注意点
 
(1)スプリングバック量は大きい。 → 金型対策が必要。

(2)最小曲げ半径は大きくなる。
(軟鋼板:t0.5mm以下 ←→ ステンレス鋼:t0.5mm~t1.0mm以上)
ステンレス鋼で、極端に小さな曲げ半径を用いると、肌荒れ・応力腐食割れが発生します。
その際は(角を鋭く曲げたい時は)、Vノッチを付けて曲げる方法があります。

(3)大きな曲げ荷重が必要。
 
 
3.成型加工の注意点
 
(1)フェライト系ステンレス鋼種(SUS430)の場合、厳しい深絞り加工を行なうとリジングといわれる独特のひずみ模様が板表面に発生します。この修正にはかなりの工数を費やします。
また縮みフランジ変形による、絞り方向に直線的に発生する縦割れがあります。この割れは後で衝撃を加えても同じように割れることはほとんどありません。
ごく浅い絞りや張り出し加工においては、ストレッチャーストレインといわれる凸凹模様が表面に表れる場合があります。
 
(2)オーステナイト系ステンレス鋼種(SUS304)の場合、熱伝導度が低く、熱膨張係数が大きいため、絞り製品の側壁が膨らむ傾向が見られます。→リストライク工程を追加することで対応可。
またマルテンサイト変態が大きい絞り加工品を、しばらくおいて置くといつの間にか割れていることがあります。(時期割れ、遅れ破壊、置き割れ
この割れは加工直後に起きることもあれば、何ヶ月後に起こることもあります。
対処法としては温間加工が有効と考えられます。

お知らせ 
ヨシカワ ホームページをリニューアルしました。

知識の蔵 
ステンレスについて

1. ステンレス材の表し方(ステンレス記号)
(1)
SUS (Steel Use Stainlessの頭文字):ステンレス鋼材(板・帯・棒・線・管)
SCS (Steel Casting Stainlessの頭文字):ステンレス鋳鋼品
 
(例)SUS430,SUS304,SUS316L
SUS304L

 
(2)3桁の数字の最初の数字
200番台 : クロム・ニッケル・マンガン系
300番台 : クロム・ニッケル系
400番台 : クロム系
600番台 : 高温高強度合金系
 
(3)数字の前後にアルファベットがついているもの
L : 低炭素を表す(Low Carbon)   (例)SUS304L
J : 日本独自の鋼種を表す   (例)SUS316J1
XM : ASTM規格(アメリカ材料試験協会規格)での特許鋼種   (例)SUSXM27
N : 窒素が添加された物(強度を上げるため)   (例)SUS304N
 
(4)鋼種記号の末尾は材料形状を示す
B : 棒(Bar)
HP : 熱間圧延鋼板(Hot Plate) 構造材に主として使用
CP : 冷間圧延鋼板(Cold Plate) 表面材として使用
 
SUS304HP


(5)表面仕上げ記号
2B : 一般用の材料仕上げで、光沢を出すために軽く冷間圧延したもの(B:Bright 輝く)
BA : 冷間圧延後、光輝熱処理を行った後、更に光沢を上げるために軽い冷間圧延をしたもの
HL : 適度の粒度の研磨ベルトで、連続した研磨目をつけたもの(ヘアーライン)
#400 : 2B材を#400番バフにより研磨仕上げしたもの
No.4 : 2D又は2B材を研磨ベルトで研磨したもの(断続的な研磨目)
No.6 : サテン(梨地)仕上げ(No.4よりつや消し)
No.7 : 高度の反射率を持つ準鏡面仕上げ(研磨目あり)
No.8 : 最も反射率の高い鏡面仕上げ(研磨目なし)
 
SUS304L 2B


<ちょっと一言>
ステンレスのことを「ステン」と省略して言われている方がおりますが、「Stainステン」=「汚れ」という意味ですので、 Stain・lessサビ ない…本当は「サビにくい」なんですけど…)と言われた方が宜しいのではないでしょうか。 細かいことではありますが…。
 
 
2. ステンレス鋼の特徴と分類(分類の一例)

クロム系
ステンレス

マルテンサイト系

焼入れ
硬化性

耐食性
(孔食指数)
SUS410

125


SUS410(13Cr,≦0.15C)
焼入れにより硬化するので高強度・耐食・耐熱性が必要なシャフト等に使用される
SUS420J1(13Cr,0.3C)
刃物として使用

 

フェライト系

非焼入れ硬化性

耐食性
(孔食指数)
SUS430

7

SUS430(17Cr,≦0.08C)
一般耐食材として厨房用品として使用
SUS444(18Cr,2Mo)
高耐食性温水器用として使用

クロム・ニッケル系
ステンレス

 

オーステナイト系

冷間加工硬化性

耐食性
(孔食指数)
SUS304

9

SUS304(18Cr,8Ni,0.06C)
最も一般的に使われている材料で
全ステンレス生産量の60%以上を占める


 

物理的特性051020_k07.gif


ステンレスの特徴
(1) 熱が伝わりにくく保温性が良い
(2) 高強度材である
(3) 加工性が良い(扱いやすい)
(4) 表面処理が可能(研磨・塗装・発色(素材自体に色を付ける))
(5) 耐食性が良い(サビにくい)
(6) 衛生上優れた材料(清掃面さえしっかり行っていれば汚れが付着しにくく雑菌などが繁殖しにくい)
(7) リサイクル性が良い

 
3. ステンレスの注意事項
(1)サビについて
ステンレスは他の材料と比較すると耐食性は良いですが、サビが発生しないのではなくサビが発生しにくい材料です。用途が異なったり、加工方法の違いによってはサビが発生します。
適正な鋼種・加工方法を選択することと、こまめに手入れを行なうことでサビ発生を防ぎ製品を長持ちさせることができます。
(汚れが付着すると、ステンレス表面は相対湿度100%以下でも結露が起こりやすくなり、この水分で腐食(サビ)が起こります。)
鉄材を研磨した砥石でステンレス材の研磨は行わないこと。鉄材とステンレス材が一緒に流れる場合は十分な注意が必要です。

(2)加工上の問題

材料

プレス加工性

溶接性

表面処理

SUS430

No.4材・HL材は目方向があるので材料の歩留まりを考える。
加工上のキズは付きやすいので必要に応じて保護シートを考える。

リジング
縦割れ
材料の方向性が強い

低温割れ
溶接個所の耐食性は他の部分より劣る
溶接焼け発生

<塗装>
No.4材・HL材を使って塗装を行うと、密着性は良くなります。又はステンレス用塗料を使用。

<研磨>
研磨による熱で材料が伸びベコつきが発生する場合があります。バフ粉は除去しにくい。

SUS304

No.4材・HL材は目方向があるので材料の歩留まりを考える。
加工上のキズは付きやすいので必要に応じて保護シートを考える。

時効割れ

高温割れ
溶接個所の耐食性は他の部分より劣る
溶接焼け発生

(3)耐指紋性
ステンレスは素手で触れると指紋あとが付きやすいです。もし付いた場合は、ステンレス専用洗浄剤又は有機溶剤(アルコール、ベンジン)等で拭き取り、乾かない内に新しいきれいな布で拭き取ると良いです。
ステンレスにクリア塗装を施すと指紋跡は目立たなくなる上、清掃しやすくなります。
使用するステンレス材がおかれる環境条件(水分の有無・水質・温度・構造等)を考えた上で、最適なステンレス材を選択することが大切です。また、その選択した材料に合わせて構造や加工方法(溶接方法)を適切に決めることが大切になります。そのようにして出来上がった製品は、細やかな手入れを継続して行うことにより、きれいな状態で長く使用することができます。
 
参考文献 : ステンレスの初歩(ステンレス協会発行)

専門的なご質問 2005年10月05日
SUS301を使用したカッターの刃こぼれ

SUS301 を使用してカッターの製作を検討していますが、 SUS304 や 316 と比較して刃こぼれはし易いのでしょうか。

刃こぼれという事になりますと、耐衝撃性の比較になろうかと存じます。古い書物ではありますが、各材質の衝撃値が記載されていましたので、それを元に回答致します。
SUS301 …衝撃値: 14Kg ・ m / SUS304 …衝撃値: 22Kg ・ m / SUS316 …衝撃値: 17Kg ・ m / SUS430 …衝撃値: 5Kg ・ m
衝撃値から考えますと、この中では SUS304 が一番刃こぼれしにくいという事になりますが、この程度の差ですと大きな問題ではないように思われます。

※材料に関するお問合せは吉川金属へお願いします。<お問合せ先

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